新しい採用プレイブック
今の職場空間は、ほんの1年前には想像もできなかったような変化を遂げています。生成AIが台頭する中で、出社ルールを再度課す企業の増加、不安定な経済環境、求められるスキルを備えた人材獲得競争の激化により、人材を取り巻く状況が変わりつつあります。
人材採用担当 (TA) は、雇用主がこうした変化を乗り越えられるように最前線でサポートしていますが、これまでのやり方ではもう対処できなくなっています。企業の優先事項が変化している中で、採用担当は最適な人材を採用、定着させるために、新たなスキル、ツール、そして柔軟性を必要としています。
採用担当の今後の展望に関するより深いインサイトを得るために、当社は数千人の採用担当者に調査を実施しました。最前線で活躍する人材リーダーから話を聞き、LinkedInプラットフォーム上の何十億ものデータポイントを分析しています。採用担当者が新時代の働き方に対応するうえで役立つ6つの予測を以下に紹介します。
未知なる未来は、可能性の宝庫
テーマ別に見る17の予測
採用リーダーにとって、今は一筋縄ではいかない正念場です。不透明な経済、そして労働環境を変える新たなトレンドの狭間で、採用リーダーは組織にとって真のチェンジメーカーになるチャンスを手にしています。候補者の望み、保有する資格、ビジネスの中で彼らのキャリアを輝かせる手段など、採用リーダーには戦略性や順応性をもって人材に寄り添うことが求められています。
このレポートでは、世界中の採用リーダーへのインタビューと採用担当者数千人へのサーベイ、さらにLinkedInが持つ膨大なデータによる分析結果を基に、17の予測を紹介しています。
人材採用の役割
人材採用の役割
予測1 | 人材採用の役割
採用がビジネスに不可欠な変化を促進
採用業界はパンデミックの煽りを受け、かつ「大きな転換」期にも直面しました。人材採用の戦略性が増しているのは疑いの余地がなく、人材採用担当者の70%が、採用チームも企業の戦略的意思決定における発言権が与えられるべきであると考えています。
しかし今や、人材リーダーは「実際に発言権を得る機会を手にしている」と語るのは、Microsoft社のBrett Baumoel氏です。「戦略的意思決定の形態そのものすら変えようとしている」とも述べています。
CFOとは報酬の話をし、CMOとは採用ブランドの微調整をし、CLO (学習最高責任者) とはスキルギャップの特定を行うなど、人材リーダーがチェンジメーカーとして発揮する影響力は経営陣全体に及ぶことになるでしょう。
これまでの採用担当者の影響力は、今ほど大きくはありませんでした。 「会社にとって有益な採用判断を行いました」と言っていた採用者が、今では「会社の仕組みを変え、働く場所の選択肢を変え、求めるものを変え、採用のあり方を変えました」と胸を張れます。
Brett Baumoel
Microsoftグローバル人材採用部長 - エンジニアリング
予測2 | 人材採用の役割
採用現場で増える給与の話
止まらないインフレ、実質賃金の低迷、身動きが取れないほど競争が激化した労働市場。これらの傾向が三つ巴となり、全世界の候補者の最優先事項に給与が挙げられる今、何かしらの手を打つ必要があります。
採用、財務、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン (DEI) 間を巡る報酬関連の意見交換は、給与の透明性が高まる時こそスピード感が求められます。 採用リーダーがこの話題をもちかけることで、会社が常に一歩先を行くための後押しにつながります。
候補者の優先順位、労働市場の動き、そして自社におけるリアルタイムな採用実績について最も明確に把握している採用リーダーであるからこそ、給与やビジネスへの影響に関する話題を率先して行うのに最適の立場です。経歴よりもスキル重視の思い切った給与体系から、インフレに合わせた賃上げの推進によりトップレベルの人材を維持することまで、内容は多岐にわたります。
企業の採用担当者として、市場や承認予算よりも低く採用を決定できることに以前は満足感を覚えていましたが、今ではそれを恥ずかしく思っています。 そうして獲得した新人は、もっと良い条件が提示されたらすぐに転職するリスク要因になります。 会社の給与体系を協力して組み立て、企業理念を提示する際にこの考えを共有することが採用担当者の義務です。
John Vlastelica
Recruiting Toolbox - CEO
予測3 | 人材採用の役割
人材のパワーアップと採用ブランディングのパワーアップは比例関係
採用が低迷していても人材獲得競争が止む気配はないことを、人材リーダーは知っています。一般的には採用が減少すれば労働者の力も弱まるものですが、採用チームはこのバランスは時間と共に逆転すると見ています。採用の未来を問われた人事担当者の64%が、今後5年間で雇用側とは反対に候補者や従業員にとって有利になっていくと予想しています。
そのため、明確で競争力のあるEVP (企業が従業員に提供する価値の提案) を練り上げ、しっかりと伝えることが今までより重要視されてます。ほとんどの採用予算で縮小や低迷が見込まれる中、人材採用担当者の大半が今年増額を予想している唯一の項目が、このEVPです。とはいえ、人材の最優先事項を理解して着実に進めなければ、採用ブランドへの投資も無駄になりかねません。
採用ブランド、すなわち人材が惹き付けられ、エンゲージメントを向上させ、定着できる企業文化をきちんと伝える方法について真剣に考る時には、言葉だけではなく行動に移す必要があります。候補者はその姿を見て、キャリアサイトには書かれていない本心を突き止めようと、ネットワークを駆使して調べるでしょう。
John Graham Jr.
Shaker Recruitment Marketing - 採用ブランド、ダイバーシティ、カルチャー担当VP
予測4 | 人材採用の役割
採用担当者にますます求められる、戦略的ソフトスキル
会社に必要なスキルは、急速に変化しています。LinkedIn CEOが頻繁に言及しているように、「たとえ仕事を変えなくても、あなたの仕事の中身が変化していることは十分にあり得る」のです。 人材採用チームも例外ではありません。
今後、採用担当者に必要とされるソフトスキルのトップ5には、「適応能力」、「問題解決能力」、「ビジネスの洞察力」が入っています。人材採用担当者が戦略面でのパートナーとなっていくにつれ、スピーディに対応しながら包括的な事業目標に近づくソリューションを見出す必要が生じます。
また、会社がスキルを採用の主軸とするにあたり、従業員全体および自社の採用組織の中で最重視するスキルを採用チームが考慮しなくてはなりません。
採用担当者は、自分に何が求められているのか、それが事業全体の目標と目的にどう一致しているのかを尋ね、深く理解できる能力が必要です。
Lars Schmidt
Amplify - 創設者
予測5 | 人材採用の役割
採用業務と人材開発の連携強化
かつて採用部門と人材開発 (L&D) 部門を隔てていた壁は、急速に取り払われつつあります。人材採用担当者5人のうち3人 (62%) はすでに人材開発 (L&D) と密接に連携していると回答していますが、さらに多くの担当者が一層の連携強化が必要と考えています。
採用リーダーの業務範囲が社内の配置転換やスキル優先の採用業務、従業員の定着などにも広がっているため、新たな役職に就く人材を社内から調達できるようにしたり、スキルギャップの特定や社内でのキャリアアップに向けて、人材開発 (L&D) との連携強化は欠かせなくなってきます。
人材開発 (L&D) 担当者側も同様で、LinkedInラーニングの2023年ワークプレイスラーニングレポートによれば、今年度は人材採用チームとの連携がより密接になったと47%が回答しています。 さらに、人材開発 (L&D) にとっての最重点分野は学習プログラムと事業目標のすり合わせであるとも回答しています。この分野は、会社にとって必要なスキルを把握するうえで、人事採用部門が補佐的な役割を果たせる分野です。
採用が落ち込む今こそ企業は人員戦略を見直し、足りない人材を社内で調達する手段を見つける時です。
Elsa Zambrano
NXP Semiconductors - 人材&文化担当シニアバイスプレジデント
予測6 | 人材採用の役割
ジェネレーティブAIの活用で、採用担当者は人にしかできない仕事に集中
ChatGPTのようにAIがコンテンツを生成するジェネレーティブAI (GAI) 型のツールは、求人案内の作成や候補者ごとにパーソナライズしたメッセージの作成など時間がかかるタスクに役立てられそうなことから、人材のプロの多くが期待している新技術です。
人材採用にGAIが与える影響について、2023年2月のサーベイで回答した採用担当者の2/3 (68%)* が「非常に期待が持てる」または「慎重ではあるが楽観視している」と回答しています。一方、人材採用業界のインフルエンサー、Glen Cathey氏は自身を「慎重ではあるが、熱烈歓迎派」と評しています。同氏はGAIによって相当な時間の節約が可能になり、その分を人間が負うべき作業、すなわち候補者の話や希望に耳を傾けたり、彼らにとって良かったと思える仕事を見つける手伝いをするための作業にあてることができると考えています。
ただし、GAIがコンテンツを作成するにしても、そのループの中には必ず人が介在していなくてはなりません。適切なノウハウを持った人間が、作成されたコンテンツを常に注意深くチェック・微調整する必要があります。Cathey氏は車の自動運転技術に例えて、「常に人がハンドルを握っていなくてはダメです。さあどうぞ、と運転を任せきりにできる段階でもないし、運転中に居眠りできるような段階では全くないということです」と述べています。
当面の間は、人材採用に人の存在は欠かせないでしょう。 特に見つけにくいポジションにこそ人間らしさが重要で、その核には『共感』があります。 ウェブサイトに表示された求人情報にはない、チャンスや会社の存在に生命を吹き込むのが、優れた採用担当者なのです。
Glen Cathey
SVP、人材アドバイザー兼デジタル戦略担当
Randstad社
注: これらの結果は、米国の225人以上の採用担当者と採用責任者が参加する小規模な調査によるものであり、本レポートに記載されている他の調査結果とは異なります。サンプルサイズが小さいため、これらの結果は方向性を決める上での指針としてのみ理解していただく必要があります。
経済の不確実性
経済の不確実性
予測7 | 経済の不確実性
採用情勢が向かい風を受ける中、会社は多様な戦力の育成に依然注力
経済の先行きが不透明な中では、雇用主は多様な人材の確保におよび腰になると考えるかもしれませんが、実はそうではありません。
ほとんどの採用担当者は採用全般にマイナスの影響を受けていると答えているものの、4人に3人は採用におけるダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン (DEI) の優先度は下がっていないと答えています。実際に20%近くは、今でも優先事項であると回答しています。
DEIへの取り組みは数十年前に遡りますが、企業が相次いで多様性の推進を約束した2020年から、多くの企業の中心的テーマになりました。取り組みの大部分を実際に達成できるのかは定かではなく、単なる理想論なのか行動を伴う現実的な計画なのか、このサーベイの結果に懐疑的な人もいることでしょう。従業員、採用候補者、一般消費者も、企業がコミットメントを果たすよう求めていきます。
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン (DEI) は、次世代の従業員の優先事項です。 彼らは自分たちと同じような立場のリーダーを待ち望んでおり、社会が危機に陥った時だけではなく、組織が長期的にDEIに取り組んでくれることを期待しています。
Dr. Tana M. Session
DEI - ストラテジスト
予測8 | 経済の不確実性
不確実性に対する会社の対策として、非正規労働者の採用増加を予測
先行きが不透明さを増す中、企業は市場の急変に備えてより機敏な対応が求められます。そのため雇用主としては、必要に応じて労働力を調整しやすい契約社員やギグワーカーなど、臨時で雇える人材に頼ることが増える可能性があります。
アメリカのLinkedIn求人を例にすると、比較的安定した正社員の求人よりも、契約社員の求人が急速に増えています (注: 契約社員とは、契約書で定めた一定期間に限って企業に労働力を提供する契約であり、フルタイム/パートタイム業務を指すこともあります)。
こうした動きは人事採用チーム内部でも見られますが、データからは2つの意見が拮抗していることが分かります。前年との比較で、今年は22%の企業が社内の採用担当者に多く予算を充てる予定と回答した一方、23%は外部の人材派遣会社に多く予算を回す予定であると回答しています。
2023年の今、将来起こることが良いにしろ悪いにしろ、一時的な人材不足を解消できない採用リーダーはこの先の多くのリスクを抱えるでしょう。必要に応じて柔軟に数の調整ができる対応力が求められています。
Stephen Lochhead
Expedia - グローバル人材採用SVP
採用ブランディング
採用ブランディング
予測9 | 採用ブランディング
会社は今後も候補者の最大の希望を注視
労働市場は依然として厳しく、今後5年間は売り手市場が続くと見込まれています。競争力を損なわないためにも、雇用主は採用ブランドについてもう一度見直し、今の候補者が求めるものと一致させていく必要があります。
LinkedInでは毎月20,000人以上のメンバーに対してサーベイを実施し、転職を考えた場合に最も重視することを調査しています。その結果、圧倒的に多い最優先事項は、満足できる給与と福利厚生、その次にワークライフバランスと柔軟な働き方が続きます。働き方の自由度と給与の2つは、前年比で最も伸びた優先事項でもあります。
採用ブランドで高い給与や柔軟な働き方以外の特長を伝えても、人目は引かないかもしれません。しかし情報を伝えなければ、候補者はその点を気にするかもしれないことに注意しましょう。
良い給与、バランス、働きやすさは、求人に必須の要件です。しかし実際は、それだけで注目されるわけではありません。 今の求人市場で、先に挙げた待遇は予想の範囲内です。当社の採用ブランディングでは、他社との違いを前面に出すようにしています。
Michaela Schütt
Siemens - グローバル人材採用部長、SVP
予測10 | 採用ブランディング
候補者に向けたアピールポイントの見直し
これまで雇用主に対する候補者の要望について見てきましたが、雇用主側はどのように認識しているのでしょうか。
そこでLinkedInでは、2,000名の採用担当者に対してサーベイを実施しました。すでに20,000名の候補者から回答を得た質問と同じ質問をして、候補者の最優先事項を推測してもらいました。こうして得た2つの回答を比較すると、興味深い認識の違いが浮き彫りになりました。
採用担当者は最優先事項だけに囚われ、その他の重要な条件を誤って認識している傾向があります。実際の候補者の好みは、単純なリストが示すよりも拡散的で、一点にだけ集中しているわけではありません。
柔軟な勤務体制の細部にこだわるよりも、従業員の満足度や意欲といった最終結果に焦点をあてましょう。そして、その満足度につながる企業文化の側面も、おろそかにしてはいけません。また、組織における昇進の仕方だけに注目するのではなく、会社にとどまるかどうかに関わらず、個人のキャリアを育てるために新しいスキルを習得する方法も伝えましょう。
景気が回復すれば、人材の獲得競争は再び一気に過熱します。だからこそ企業にとっては採用ブランドをどのように位置づけ、実際に実現していくかを進めていくことが非常に重要です。
Marc-Etienne Julien
Randstad Global - 人事最高責任者
予測11 | 採用ブランディング
Z世代は人材育成と多様性を重視する会社を目指す
1996年以降に誕生したZ世代の担当者は、すでに労働力の主軸になっています。多くの人が優先事項に沿ったキャリアのスタート地点に立っています。
Z世代の優先事項は、彼らの親であるX世代とは明確な違いがあります。若い従業員にとって何より重要なのは、キャリアアップと新しいスキルの習得です。これらのチャンスを重視する傾向は、X世代より50%近くも高くなっています。
また、若い世代はインクルーシブな職場環境で働くことの重要性を強く意識しています。
Z世代は当社従業員の50%近くを占め、我々は彼らの働き方を尊重し取り入れることを学んできました。 Z世代は仕事のために生きたりはせず、内輪だけで通用するような言葉は下らないと思っており、正当な報酬を得るべきだと考えています。
Ruben Santos
Ahold Delhaize - ヨーロッパ&インドネシア人事部人事戦略&プログラムリーダー
スキル優先の人材採用
スキル優先の人材採用
予測12 | スキル優先の人材採用
絶対基準はスキル優先の人材採用へと変化
ゆっくりではありますが着実に、名門校出身や有名企業での経験といった表面的な情報よりも、候補者のスキルを重視するスキル優先の人材採用を企業が受け入れ始めています。
2019年以降、LinkedInでスキルの絞り込みを含む採用担当者の検索シェアは25%増加しており、現在では採用担当者が経験年数よりもスキルで検索する傾向が50%も増えています。
これからは、スキル優先の人材採用が当たり前になるでしょう。採用担当者の4人に3人が、自社においてスキルが優先されるようになると答えています。しかし、候補者の現在のスキルを正確に評価できると考える採用担当者がわずか64%であることから、まだそこまで手が届かないケースもあるようです。こうした人たちは、この数年でクリアする課題があるのは明白です。
欲しい人材を「排除」することなく「絞り込む」にはどうしたら良いでしょうか? 採用担当者は求人案内をコピー & ペーストするのに長けていて、本当にあっという間に採用までこなせます。その求人で求めているものやスキルには、しっかりと目を通していません。そこから変えていかなくてはなりません。
Jennifer Paylor
Capgemini - グローバルタレントイノベーション&スキルトランスフォーメーション部長
予測13 | スキル優先の人材採用
スキル優先の人材採用により、これまで見過ごされてきた人材に注目が集まる
今後スキル優先の人材採用が中心になると言われてもピンと来ない場合は、このようなケースを考えてみましょう。大卒以外の候補者にも門戸を開くことで、戦力の多様化に向けた大きな一歩が踏み出せます。
4年制大学という条件の撤廃は、多様性の推進における最も重要な事柄の1つだという認識が広まってきています。今まで過小評価されてきたタイプの人々に大学進学者が少ない傾向があるのは確かですが、だからといって高い能力を発揮するスキルとポテンシャルを持っていない、ということではありません。大学に進学しなかった従業員でも、経験を積むことで生産性などの重要な指標において、大卒の従業員とほぼ同等の成果をあげるという調査結果があります。
現在、アメリカでのLinkedIn求人の1/5が、4年制大学卒を条件に挙げていません。組織に多様な視点をもたらす、さまざまなバックグラウンドを持った人材を求める企業が増えるにつれ、この数字は今後も増えると考えられます。
粘り強く独学を貫くようなタイプの人は、履歴書に有名大学の名前が入ってはいないかもしれません。 地域のコミュニティカレッジには、大企業が決して採用しない、そんな未発掘の技術者の原石がゴロゴロと眠っています。
Clyde Seepersad
Linux Foundation - 研修&認定シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー
予測14 | スキル優先の人材採用
従業員が持っている、または必要なスキルのマッピングを重視
すでにスキルは貴重な財産となっていますが、会社にあるスキルやないスキルをより明快に可視化する必要に迫られるでしょう。先見の明がある雇用主は、従業員のスキルを特定の役職に必要なスキルと併せてマッピングします。
情報に基づく人材採用を行うためには、従業員のスキルの把握が欠かせないと答えた採用担当者は94%にも上ったものの、現在実際に会社の優先事項にしていると回答した人の割合はわずかに減って84%にとどまりました。
従業員のスキルをマッピングするとスキルギャップを見つけ出しやすくなるだけではなく、募集中の役職について、組織内で最適な従業員をマッチングしやすくもなります。従業員にとっては、自身の能力に合った求人のチャンスを見つけやすくなります。
ただしこれを軌道に乗せるには、人材採用チームがその職務における真の「必須」スキルと、単なる「推奨」スキルを区別できることが前提です。
スキル優先の方針には、単なる採用業務以上の広い視野が求められます。まず、会社の事業で必要となるスキルを把握しなくてはなりません。次に従業員が持っている、または習得しうるスキルを把握し、その上でどのようなスキルを持つ人材を採用しなければならないのかを理解して初めて、適切な人材戦略が構築できます。
Jennifer Shappley
LinkedIn - 人材採用責任者
配置転換とスキルアップ
配置転換とスキルアップ
予測15 | 配置転換とスキルアップ
ビジネスリーダーは自社の求人を社内で調達する重要性を認識
次の採用案件は、すでに社内にいる逸材に決まるかもしれません。不安定な経済状況により、会社は募集中の役職を社内で調達できないか確認するケースが増えています。採用担当者の75%が、社内公募は今後5年間の採用を形作る重要な要因になるだろうと回答しています。
従業員の定着率向上など、配置転換には大きなメリットがもたらされます。LinkedInのデータによると、社内公募に積極的な従業員の定着期間は2倍近くになることが分かっています。
また、採用担当者の業務に配置転換が加わる可能性も増しています。会社の人材ニーズを把握し、人材を獲得するスキルを持ち、候補者の評価とエンゲージメントに長けた採用担当者だからこそ、社内の配置転換の取り組みを請け負うことができます。
多くの会社にとって、社内の配置転換は数年がかりの取り組みになりますが、その途中で短期的な成果を生むことも可能です。配置転換に向けたビジョンが会社の方針とマッチしているかどうかを今一度確認することは、組織が今すぐにでも実践できます。
Jennifer Shappley
LinkedIn - 人材採用責任者
予測16 | 配置転換とスキルアップ
スキルアップは多様な戦力を維持する強力なツールに
深刻なスキルギャップに直面する企業もある中、今後5年間で従業員のスキルアップとスキルの再構築が人材採用の未来を形作る重要な要素になるだろうと答えた採用担当者が81%に上ったことは、驚くに値しません。
しかし、人材開発 (L&D) への注目の高まりにはもう一つ理由があります。学習の機会を与えることが多様性と包括性を進める上で不可欠であると、会社が理解しているためです。
事実、LinkedInがメンバーに対して、少数派グループの一層の参画を目指す上で組織に望むあり方を訊ねたところ、インド、ブラジル、イタリア、メキシコ、日本をはじめとする複数の国において「プロフェッショナルの育成と成長の機会を増やす」がトップの回答となりました。
かつては資格が重視されていましたが、 今はスキルと経験が大幅に注目されるようになり、考え方が変化しています。この実に新鮮な変化は、今以上に効果的で多様性に富むチーム作りの第一歩です。 組織は、顧客に合わせた多様で包括的な環境を目指す必要があります。それは従業員の望みでもあり、 人材を惹き付け、従業員の定着にもつながります。組織に選択の余地はありません。考え方を変えざるを得ないのです。
Alex Fleming
Adecco - 北ヨーロッパ地域取締役
予測17 | 配置転換とスキルアップ
学習の対象が、従業員だけではなく候補者にも拡大
「入社後に新しいスキルの習得支援はありますか?」、
「昇進の道のりを明確に示してもらえますか?」、
「短期間の在職予定でも、成長をサポートしてくれますか?」
候補者から寄せられるこのような問いは、今後大きくなっていくばかりだと思われます。何年かすれば、候補者は与えられた仕事のことだけではなく、今の会社がキャリア目標に対して適切な場所かを考えるようになるでしょう。このことは特にZ世代に多く当てはまりますが、世界中の従業員でも同様です。候補者にとっての優先順位の4位と5位が、昇進とスキル開発でした。
結論として、社内に学習文化を作り配置転換に力を入れることは、在籍する従業員を引き留めるための必須条件というだけではなく、今後の採用業務の成果にも欠かせません。現在の学習環境については、LinkedInラーニングによる最新のワークプレイスラーニングレポート2023をご覧ください。
企業は一層力を入れて、良好な職場環境だけではなく従業員が新たなスキルを習得できるよう支援する必要もあります。
Jade Shi
採用ブランドマネージャー
まとめ
Conclusion
この数年で得た教訓は、「予測不能な事態を予測する」ということでした。このレポートのすべての予測が説明したとおりに正確に実証されるとは限りませんが、今準備をすることでどんな未来にも対応できるようになります。
人材採用の業界は変化の時期を迎えつつありますが、傍観者でいられるわけではありません。人材採用のリーダーは世界の働き方を作り直し、それを全員に行きわたらせる立場にあります。
突き詰めれば、人材採用の未来はそれを構築する人々の手にかかっています。組織のチェンジメーカーである人材採用担当者に未来は託されています。
調査方法
アンケートのデータ
上級管理職以上に属する1,611名の人材採用担当者 (企業内人事部1,216名、人材派遣業従事者395名) と採用責任者403名を対象に、LinkedIn Researchがサーベイを実施しました。このサーベイの回答者はLinkedInプロフィールの情報に基づいて選考したLinkedInメンバーであり、サーベイの回答に基づき適格性が判断されています。今回のサーベイは、2022年10月~12月の期間で世界20ヶ国6ヶ国語で実施されたものです。
候補者の優先事項と包括性に対する優先傾向は、全世界のメンバーを対象としたLinkedIn Talent Drivers月間サーベイにおいて、20,396名から得た2022年12月の結果に基づいています。候補者の優先事項を測る手段として、「求人への応募を検討する際に、最も重視することを選択する質問」を用意し、15の雇用主による従業員のための価値提案から最大5つを選択してもらいました。最も急速に成長している候補者の優先事項は、2021年12月~2022年12月までに最も増加率が高かったものです。
インサイトのデータ
このレポートの行動インサイト (行動科学と社会科学から得た洞察) は、現時点で200ヶ国以上、9億人のLinkedInメンバーにより生成された、数十億のデータポイントから導き出されたものです。特に注記がない限り、全てのデータは2023年1月1日時点におけるLinkedInメンバーのアクティビティに関する集計データが反映されています。採用担当者の需要は、全世界を対象にLinkedInで採用担当者の有料求人が掲載された件数から測定しています。
謝辞
このレポートは、世界中の人材採用リーダーとの洞察に満ちたインタビューによる情報をもとに作成されました。以下を含む皆さまに心からの感謝を申し上げます。
Naif AlGhamdi - Almarai
Andrew Barnes - 4 Day Week Global
Brett Baumoel - Microsoft
Alex Fleming - Adecco
Pragashini Fox - Thomson Reuters
John Graham Jr. - Shaker Recruitment Marketing
Marc-Etienne Julien - Randstad
Stephen Lochhead - Expedia
Chris Louie - Thomson Reuters
Bjorn Luijters - Ahold Delhaize
Jennifer Paylor - Capgemini
Gemma Leigh Roberts - The Resilience Edge
Ruben Santos - Ahold Delhaize
Dan Schawbel - Workplace Intelligence
Lars Schmidt - Amplify
Michaela Schütt - Siemens
Clyde Seepersad - The Linux Foundation
Tana M. Session - TanaMSession.com
Jennifer Shappley - LinkedIn
Jaishree Sharma - Jubilant Pharmova Limited
Jade Shi - Alibaba
John Vlastelica - Recruiting Toolbox
Sophie Wade - Flexcel Network
Andrew White - Microsoft
Elsa Zambrano - NXP Semiconductors
調査データ
LinkedInプラットフォームデータ
エディトリアル/制作
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